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2021/01/24 16:52




少しだけお店をはじめるまでのストーリーをお話させてください。


私の話になってしまいますが
私は18歳の頃に好きな店員さんのいるセレクトショップができ、19歳からそのお店で働き始めました。
そこで取り扱うものにはデザイナーの想いやストーリーがある。そんなお店で9年間ほど働いていました。

ビルの中に入った空の見えないお店で
時計を見ないと今が何時かわからない
今日が雨かも晴れかもわからない
そんな毎日でも、大好きな服やアクセサリーに囲まれて毎日新しい出会いがあってとても幸せでした。
ファッションのスピードはとても早く、
家に帰ってコレクションの動画や雑誌を寝るまでみる。デザイナーの生き方や新しいアプローチを知る。
これも全部刺激的な自分の時間で半シーズン先を考えてる毎日。

最初は誰かの何気ない気持ちの変化や
今の社会と自分の向き合い方…
そんなパーソナルなものから始まった服のデザインもいつかはトレンドという大きな波に乗って大量生産されて消費されていく。
トレンドは刹那的に過ぎてしまうけど
そのものやそれを持った人の生活はこれからも続いてゆく…
お客様におすすめしたいものとそのスピードのギャップみたいなものとの葛藤がありました。

朝から夜までお店にいて
朝の15分か夜しか外を歩くことがなくて
ある日ふと、久しぶりに夕日を見ると
とても綺麗で、自然の美しさに圧倒されました。
こんな綺麗な風景をいつも見逃していたと思うと、はっとしました。

お店の中だけではなくて
もっと広い世界から服を考えることで
見える世界が全然違うし自分が思う綺麗と思うものの価値観が更新されていき、
服を生活の一部だと思うと
私達が考えるのは服だけではなく
生活の全体こと。
服を纏うことはどう生きるか?ということで
そのどう生きるかは
全てのものに共通している。
そんなことを考えました。
着る人自身や私たちにたくさんの感動を与えてくれる地球も一緒に呼吸をできるような服を。
そんな想いが強くなっていきました。


自分が好きだと思うものや信じるものは自分本位かもしれませんが、
ただそういう好きという気持ちはとても大切なものなんじゃないかと思います。
そして出会う方の好きなものを知って、
そうやってみんなの輪が広がってすきを増やしていけたら幸せだなと。

お店にコンセプトは「physis」というギリシャ語から来ています。
直訳するとよく自然という意味になるのですが、「physis」には様々な意味合いがあり
昔のギリシャの方は「他のものによって動かされるのではなく自ら動くもの」を「physis」と呼んでいたそうです。
もし自然がこのような「自ら動くもの」であるとすれば、自然は人間と対立するものではなく、
そのような生命的自然のなかにその一部として共存しているということです。
誰かの言う美しいではなくその本来の美しさやその人が持つ自分なりの美しさに気付いたり
それらを繋ぐエネルギーのある空間にできればいいな。と思っております。

ネットでなんでも検索をかけたら自分の好きなものを知ることができて
手に入れることができる世の中だからこそ、
お店のその場所にある
出会いの偶然性みたいなものに
価値があるんじゃないかと思いました。
physisでは国や年代を問わず、一つのジャンルにカテゴライズされないようなセレクトにしています。

お店ができたから達成ではないし
自分のお店ですが
自分だけのお店ではなくて
これから、いろんな方と一緒につくっていける場所になると幸せです。
永く永く 続く場所になりますように。

よろしくお願いします。

physis 店主 井上愛理